さとうささら「さとうささらです!」
GUMI「GUMIだよ!」
ささら「前回に続いて『世間の作曲講座にもの申す』の後編をお送りしますね」
GUMI「公開されている作曲動画の問題点について、前回はこちらの②まで紹介したから、今回は③から再開だよ」
ささら・GUMI「「よろしくお願いしま~す!」」
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[多くの『作曲講座』に見られる問題点]
①前提がおかしい(初心者が知らない/できない話が混ざる)
②やり方がおかしい(座学をやったら即実践が必要なのに、後者がない)
③順序がおかしい(曲の定義なしでいきなりコードの話を始めたりする)
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(3)順序がおかしい
GUMI「さて、③の『順序がおかしい』だけど、何の順序がおかしいの?」
ささら「人によって教育の方法論は違うので、教える内容と順序が様々なのは当然なんですけれどね。でも、例えば全五章構成の動画で一通りの手順がわかる構成になっているのに、それを明言しないで音楽知識をぶつ切りで見せて第一章を終わらせたりするのはどうかと思うわけです。また『そもそも曲とは何か』をまったく定義せずに進めて、あとから『ほらこんな曲ができた』と結果だけで見せたりするものも問題でしょう」
GUMI「教える内容の順序の問題じゃなくて、教える手順がきちんとしていないっていうこと?」
ささら「教える手順がきちんと検討されていないので、結果として内容の順序も良くない感じになる、というべきでしょうか。加えて言うと、『何のために何を教える、その結果、何ができるようになる』と、視聴者にきちんと説明していないことも多いです。本来それは、初心者のモチベーションにとって非常に重要なことだと思うんです」
GUMI「なるほど。つまり『教える内容』は良くても、それを『どうやってわかりやすく教えるか』まで考えが回っていないってことだね」
ささら「もちろん講座によりますけれどね。分析担当がけっこうキツイことを言っていました。『「教える」ことと「頭の中の知識を吐き出す」ことの違いを分かっていないんじゃないの』って」
GUMI「うわぁ~」
ささら「まあそれは言い過ぎだとしても、作曲ド素人には厳しい講座が多いのは確かです。もちろん、無いよりはあった方が何かしら役に立つので、不要だなんて絶対に言いませんけれど」
GUMI「最初はあくまでも参考書と考えてざっと見て、後で役に立ちそうな話だけメモしておくぐらいの方がいいのかもね。一度失望して見捨てたら、また見て理解しようとするには相当なパワーがいるものね」
ささら「かなりの手間暇をかけて動画を作っているのに、誰に何を教えてどこに連れて行こうとしているのかが全然わからないものが結構多いんです。作り手の善意が空回りしている感じで、本当に惜しいっていうか」
GUMI「『音楽のプロ』は必ずしも『教えるプロ』に非ず、か。素人の動画の場合はさらに玉石混交になりそうだよね」
(4)順序がおかしい・その2 ~コードなんかどうでもよい~
ささら「あと、これは技術担当の愚痴ですが……とにかく世間の講座がどいつもこいつも音階(スケール)とコードの構造の説明を延々と続けるのは何とかならんのか、と。あとは直接引用しますね」
『ピアノを習うときだって最低限の楽譜の読み方を教えたら即座に実技に移る。作曲講座を名乗るなら同様に、「最低レベルの曲の作り方」から入るべきだ。ましてDTMは楽器を弾くより遙かに簡単に音を出せるんだから、とにかく曲を作りまくらせればいい。そして視聴者が自分の作った曲と世間の曲を比べて、「何が足りないのか、うまくいかないのは何故か」を疑問に思ったところで初めて理論的な背景を説明すれば理解も早い。そもそも音大やコンクールレベルは別として、ちょっとピアノが引けますよ、その気になれば簡単な曲なら作れますよって程度なら、コード進行なんて存在すら知らない人が山ほどいる(※)。初心者のうちは必須技能ですらない話を延々とするなんて、教え方の順番が狂ってる』
ささら「……だそうですけれど」
GUMI「ああ、それで『コード進行なんて、既製品を借りてくれればいい』って発想につながるわけね」
ささら「です。世間の多数派の講座がやっているのは、パソコンで年賀状を書きたい人に、パソコンのハードとOSとアプリケーションの違いとワープロソフトのインストール方法から教えているみたいなもの、だそうです。ドとレの間が全音で、ミとファの間が半音だとか、そんなことは最初はどうでもいいじゃないか、と」
GUMI「必要なソフトがインストールされた既成のパソコンを買ってくればいいってことだね。テンプレートに無い絵が欲しくなったり、機能を越えて自由にレイアウトを組みたくなったときに……」
ささら「そのとき初めてパソコンの仕組みを理解すればいいんです。実技に直結しない知識なんて、最初はただの重荷です」
※:現実はそんなものです。ちなみに音楽大学でバイオリンの助手をやっていた経歴の人にコードについて聞いてみたところ、「ああ、確か大学で習ったねえ。そんなのはどうでもいいけど」程度の反応でした。ギター等のコード主体で演奏する楽器や作曲科なら反応も違うでしょうが……
(5)使い分けを推奨
ささら「と、以上の内容を踏まえた上で、この講座は作られたわけです。だから我々がベスト! と胸を張るかというと、そんな身の程知らずなことは言いません。積極的にこの講座を活用していただきたいのは、主に以下のような方々です」
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[当講座を積極的に推奨する方々]
・楽譜が何とか読める程度で、他の音楽技能がほぼ無いと自覚している人
・他の講座(複数)を見て内容が理解できなかった人、挫折した人
・理論の学習よりも、とにかく手を動かして曲を作ってみたい人
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GUMI「最初にさっき言っていた初心者ランクの②と③、つまりほとんど音楽の訓練を受けたことがない人相手ってことだよね」
ささら「この講座は『作曲の手法の一つの例』を徹底的に細かく教えていくスタイルをとっていますからね。ヒントをもらえば自力で自分なりの作曲手法を編み出せるような人には、むしろ回り道になると思うんです」
GUMI「他の講座を見て内容を理解して作曲を始められるなら、それで充分……」
ささら「はい。あと初心者ランク④とか⑤で、もうメロディぐらいは自力で作れるからそれをきちんとした曲にしたいっていうレベルの人にも向きません」
GUMI「アレンジや伴奏に関しては、きちんと理論を学んでテクニックを身につけた方がいいんだよね」
ささら「当動画に限らず、動画そのものが時間の制約から要点に絞って教えがちになるので、むしろきちんとした教本で学ぶほうが早道かもしれません。ただ、実演がついた動画は役に立つと思います」
(6)次回は?
ささら「とまあ、狂犬が吠え付くみたいな感じで好き放題言ってきた『やさぐれ編』ですが、次回はちょっとほとぼりを冷ます……もとい、読者の皆さんの役に立つ実用的な話題になるもようです」
GUMI「具体的には?」
GUMI「……まあ、敵を作らない範囲でよろしくね。それでは……」
ささら・GUMI「御読了ありがとうございました! 次回もよろしくお願いします!」
~その4に続く~