2017年8月27日日曜日

「蟹缶の弱音ハクなボヤ記」九言目:ボカロ関連曲の舞台化のネタを考えてみた

ボカロ楽曲の舞台化は今や珍しいことでは無くなりました。
トラボルタPの「ココロ」を皮切りに「悪の娘」「サンドリオン」「クワガタにチョップしたらタイムスリップした」そして「千本桜」等々。

私はボカロ関連の舞台にはできるだけ観劇に行っています。
舞台の場合、映画やTVとは違って編集による効果が無いので役者さんの演技の質や舞台演出の良し悪しが皮膚感覚として直接感じることになります。
この皮膚感覚が舞台鑑賞の醍醐味ではないかと私は思っています。
そこで、今回は数多くあるボカロ楽曲でさらに舞台化したら面白いかもと思ったものを挙げていきたいと思います。

・ODDS & ENDS (supercell)
 言わずと知れた名曲ですね。
 ボカロ楽曲をテーマにした舞台としては王道の内容になるでしょう。
 上演は大劇場ではなく、小劇場の方が似合うような気がします。なんとなくですが。

・エイリアンエイリアン (ナユタン星人)
 ニコ動での再生がダブルミリオンを超えたヒット曲。
 これはボカロがテーマというよりは、コメディ演劇のモチーフとして使えるのではと思います。
 こじらせた恋愛感情をもった女学生を主人公にして、そのこじらせた感を笑いに転化するようなコメディタッチの舞台が見てみたいですね。

・Cipher サイファ (佐藤純一/FLEET)
 2011年の曲なので知らない人の方が多いかもしれませんが、私は未だに朽ちない名曲だと思っています。
 初音ミクを現代の音楽界を変える存在ではないかという着想から生まれた曲だと聞いています。
 哲学的な舞台になりそうですが、能力の壁にぶつかった作曲家が出会ったある少女の物語。
 脚本家の力量が試されそうな作品になりそうですね。

・夢見ることり (はややP)
・magnet (流星P)
 どちらも今やボカロの古典とも呼べる曲ですね。
 これは超会議2017の超歌舞伎で上演予定の原曲「吉原ライメント」から遊女の話としてチョイス。
 ミクとリンは遊女として廓に囲われている。二人は思いを寄せ合う仲であるが、ミクには過去、ルカと深い関係になっていた。ルカは今は亡き人であるが、その影はミクの心の奥深くに刻まれているのであった。
 こんな三角関係の物語はどうでしょう。

・千年の独奏歌 (yanagiP)
 KAITOオリジナル楽曲の指折りの名曲。小説化もされているようです。
 KAITO版の「ココロ」みたいな感じの物語になりそうですね。
 これは、宝塚でもやれるのではないかと思っています。

・Hand in Hand (Kz)
 ミクダヨーさんが主演の着ぐるみショーなんてどうかなと思うんですよ。
 「おかあさんといっしょ」みたない幼児向けのショーで、「みんな仲良くしようね」みたいな。

探せば色々と出てきますが、ぱっと思いついたモノを挙げてみました。
誰かが実現してくれるとうれしいのですが、やっぱり自分で舞台化してみたいなという気持ちはあるんですよね。

2017年8月13日日曜日

「Forgerの備忘録」 第8回 発話の発達から推測する作曲技能の発達についての試論

 以前にも述べたように、音楽の構造は言語の構造とほぼ並行的であると言える。また、音楽の起源が歌である可能性が高いことから、言語の発話技能と音楽の作曲技能も人間の脳機能としてはかなりの程度で類似していると推測される。

 従って、幼児の発話の発達は、音楽素人の作曲技能の発達と類似した段階を経るのではないかと私は考えている。

そして、幼児の発話が一足飛びに発達しないのと同様に、音楽素人の作曲も段階を経て成長すると考えるのが妥当であろう。

 そこで、まずは、幼児の言語の発達段階を概観してみよう。
○レベル1:1歳~1歳半位
1語文が言えるようになる。
例:「ワンワン」⇒「犬がいる」「犬がいて怖い」「犬がいてうれしい」という意味にも使われる。

○レベル2:1歳半~2歳位
2語文が言えるようになる。
例:「アッチイク」「オテテキレイ」「オカシチョウダイ」

○レベル3:2歳位
3語文が言えるようになる。
例:「ボク、デンシャヲ、ミタヨ」

○レベル4:3歳位
文と文をつないだ複文が言えるようになる。
例:「ノドガカワイタカラ、ミズヲノム」

○レベル5:4歳位
話し言葉としては、一応の完成。

○レベル6:5
語彙が増え、目的に応じた発話ができるようになる。
 この発達段階を参考に、音楽素人の作曲の発達段階を仮説的に構築してみよう。
○レベル1=1語文=モチーフ
コードとリズムパターンから、「2小節の音の連なり」=モチーフが作れるようになる。

○レベル2=2語文=フレーズ
コード進行に従い、モチーフとモチーフを組み合わせた「4小節の音の連なり」=フレーズが作れるようになる。

○レベル3=3語文=メロディー
コード進行に従い、フレーズを組み合わせた「8小節以上の音の連なり」=メロディーが作れるようになる。

○レベル4=複文=曲
コード進行に従い、メロディーを組み合わせて曲が作れるようになる。
※我々の作曲講座の想定する目標。

○レベル5=最低限の話し言葉
コード進行に従い、メロディーと伴奏を含めてきちんと曲が作れるようになる。
※ニコニコ動画における多くの作曲講座の想定する目標。

○レベル6=普通の話し言葉
ジャンル等の曲調も含めて、きちんとした曲が作れるようになる。
※一般人が「作曲」と聞いて連想するレベルの目標。
 我々が作曲講座を作成するに当たり、そもそもの動機は、各種のサイトや講座動画における要求レベルが音楽素人の技能レベルよりも高すぎるためミスマッチが起こっており、そのミスマッチを埋めるような動画を作成しようというものであった。

 しかし、我々の動画に対するユーザーのアクセス履歴を解析したところ、我々の動画でもまだ要求レベルが高すぎる懸念が浮かび上がってきている。言い換えるなら、歌う=音の物真似と作曲=発話の類似性から、漠然と音楽素人の作曲技能のレベルを我々も実態よりも高く見積もり過ぎていたのではないかということである。

 実際、我々の作成した動画に基づき、私も作曲の練習をしているのだが、中々上手くいっていない。どうやら音楽素人がいきなりレベル4に挑戦するのは、よほど才能や環境に恵まれていない限り、要求が高いと判断せざるを得ない惨状である。

 では、この惨状を受けて目標を下方修正するとしたら、どこまでレベルを下げるのが妥当なのであろうか。教育学の知見を参考にするならば、自分のレベルより少し高いレベルを課題設定するのが、技能向上の効率やモチベーション維持の観点からも有効であるが、その自分のレベルを正しく測定する方法すらまともにないのが現状である。

 このように、発話の発達段階を参考に、作曲の発達段階を仮説設定することで、多くの音楽素人と我々の作曲講座との間にも要求レベルのミスマッチが起こっている可能性が確認できた。また、作曲技能のレベル測定も含めて、各レベルに応じた課題設定の方法等についても、更なる検討が必要ということも分かってきた。

 引き続き、作曲の練習を継続することで、上記の課題群について模索を続けることを述べて、本試論を終えることとする。