2018年4月30日月曜日

「PBMの会」より御礼

 ブログでの告知がすっかり遅れましたが、先日『入門さえできない人のための作曲講座』本編が完結しました。
 2014年9月21日に第一章前編を投稿してから足かけ三年弱、当初は一年半程度で終了させる予定が延びに延びて、それでも何とか最後まで完走できたのはじりじり増えていく再生数と応援コメント、わざわざつけていただいた宣伝のおかげです。応援して下さった視聴者の皆様に、改めて厚く御礼申し上げます。

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 ブログの他の記事でも書きましたが、この企画の趣旨は「音楽の授業で楽譜の読み方を習った程度のど素人」と「ニコ動にアップされた各種の『初心者向作曲講座』を理解できるレベルの作曲初心者」の間にある、実は相当に深くて広い隙間を埋めることでした。あえて偉そうに書きますが、ニコ動の作曲講座の少なくとも7割は「これを見たところで、ど素人が作曲するのは無理だな」と思える、明らかに高度に過ぎる内容のものだったからです。
 理由は簡単です。作曲講座を作るような人はたいてい子供の頃に学校教育以外にけっこうな音楽経験(ピアノとかバンドとか)を積んでいるからです。だから人に教える場合はよほど意識しないと「作曲に興味を持った頃の自分」と同じレベルの相手、つまり曲作りに関する基礎的な感覚を持っている人向の内容になってしまうのです。
 この「曲作りの基礎的な感覚がある」というのは、例えれば「補助なしで自転車に乗れる、感覚でバランスが取れる」ようなものだと思ってください。作曲の場合はこれが「いちいち理論を考えないでも頭の中にメロディが自然に浮かぶ」「でも理論がわかるとより良い作曲の助けになる」という状態にあたります。つまり「できる人」が「できない人」に曲作りのコツを説明しても、それはそもそも自転車のバランスが取れず足をついてしまう人に「正しいブレーキングはこう」「長時間乗って疲れない態勢はこんな感じ」と言うようなもので、はっきり言って時間の無駄でしかありません。少なくともそれを作曲の実作業に結びつけるのは困難です。
 ……というのも、実は「PBMの会」ではその「できる人」「できない人」の間の不毛な議論を延々と行ったことがあり、双方がお互いの基礎能力の違いを具体的に認識するまでに軽く10時間を超える対話がありました。逆に言うと、その過程を経て「ど素人に欠けているのは何なのか、何を最初に身につけるべきなのか」が見えてきたわけです。

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 そんなわけで、本講座ではとにかく「そこそこのレベルのメロディを作れるようになること」、この一点のみを目標としてそれ以外の要素の大半を切り捨てました。曲の基本三要素「旋律と和声と拍子」、つまりメロディとコード&ハーモニー、リズムのうち、後者二つはアリモノ、定番表現を利用することもできますが、曲の顔であるメロディだけはどうにもならないからです。
 だから重視するのは、正確さよりもわかりやすさ。
 やっていい範囲を示すのではなく、絶対押さえるべき点のみを指示し強制する。
 それにある意味本講座の最大の特徴とも言える「自力よりもパクり」、借りて済ませられるものは借りて済ませるという方針に従って、とにかくメロディ作りという「作業」に慣れてもらう。そうして一つの方法論が身体に染み込んで、やがてコード進行を見たらそこそこ聞ける曲が作れる領域にまで達すれば、その時ようやく他の講座の言っていることが理解できるように……つまり「音楽経験者にとっての作曲初心者」になれるだろうと考えています。
 その先、さらに進んでボカロPないし作曲者としてニコ動に投稿できるレベルにまで達するかどうかは正直わかりませんが、たとえそうでなくても曲作りという創作活動はそれ自体が楽しいものです。また、「作る側」の眼で世間に流れる曲を聞いたり楽譜を眺めたりするのは、ただ自分にとって気持ちが良いかどうかだけを基準に曲を鑑賞するのとは別の良さがあり、視野を広げる発見があります。この講座が、皆様がそんな世界に触れるための一助になれば幸いです。

2018年4月 PBMの会 一同

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